2010年6月1日火曜日

マーケティングの潮流〜1960年の出来事「顧客志向」への転換

マーケティングの1900年からの60年間は、小売業や卸売業などの商取引、セールスマンシップと販売管理、そして広告と結びつきながら販売計画以前に考えるべき「販売思考」として発達した期間だった。もちろん、その間にマーケティング調査も研究も進んだようだし、マーケティング戦略という言葉も1920年代には使われている。
しかし1960年以前のアメリカのマーケティング史を分割せずに一つに扱うのは、それ以降の変化の方が大きく、現在にとって意味があると思うからだ。

「マーケティングは消費者から始めなければならないことが、私にははっきり分かった。」
このつぶやきは1960年に発せられている。

この時期にそれまで企業が消費者に商品をどう売るかという「販売思考」から、「顧客志向」への本格的な転換が行われたと見てよいと思う。(ちなみに「顧客」という言葉そのものがマーケティングで一般化したのはもっと後の1980年くらいで、それ以前だから厳密に言えば消費者志向なのだろう。)
振り返れば、マーケティングが誕生した20世紀初頭は工業生産が拡大し、人口やその所得も急激に増加した。そして第二次世界大戦後の大量生産時代は、売り手市場を買い手市場へと変え、マーケティングはその意味を変えた。
ジェームス・F・エンゲルという消費者行動の研究者。彼はそれから30年間消費者行動を研究したと聞きます。おそらく人生を決定づける発見だったんでしょう、素晴らしい人生ですね。;やはり『マーケティング学説の発展』(ミネルヴァ書房)

というように顧客志向の歴史は、2010年の現在からも50年くらいしかない。
しかも日本にマーケティングが輸入されたのはこのころ(1950年代後半)だから、販売思考としてのマーケティングと顧客志向のマーケティングがごっちゃになって入ってきたと想像できる。顧客志向を持つ営業という意味でのマーケティング部を設している会社も多い。

同じ1960年、セオドア・レビットの「マーケティング近視眼」が発表されマーケティング発想の基盤をつくった。
また、マーケティングの4Pとして知られるマーケティングミックスも1960年の発表、マーケティングの領域を明確にした。4Pは後々のマーケティング・マネジメントに繋がる。

つまり’60年という年に、「顧客志向」「マーケティング発想」「マーケティング・マネジメント」(の基礎)」が同時スタートしたということになる。
後者2つについては次回に。