おそらく2000年に入って数年だったと思うが、その頃はたまにインターネット調査を試しては、まだ難しいなと思いながら、どういうものなら使えそうか見計らっていた。試していたのは調査の内容ではなく、この対象者(の偏りに)対しても大丈夫そうな調査は何だろうということだった。
当時はまだ他の調査手段もあったのでその差を比較できた。例えば、化粧品の所有銘柄などは実態とは±30%はあった。
2005年以降くらいになると、だんだん実態に近づいてきた。それはパソコン、インターネットの普及とインターネット調査会社のモニター数拡大によって対象者の幅が広がったからだ。
最近のパソコン普及は9割を超えている。
それでも、実態との差は最大で±20%くらいは覚悟しておこうという感覚だ。
対象者が契約したモニター、その調査に応募した人であることが、大きな理由だと思う。
その差がどれくらいで収まっているかは、その時その時の調査結果、回答の様子や標本数誤差から何となく判断をしている。「だいたい±5%くらいかなあ」という曖昧なレベルで、明示できるようなものではない。
2つのインターネット調査会社で同時に同じ調査を行った企業もあるくらい、その誤差を測りかねているのが現状だ。
うまくいった調査の場合は、ざっとインターネット普及率0.9で割ると実態1.0に近いと思われる数字が出る。
そんな誤差の可能性を含みながらも、インターネット調査を行っているのは、主に費用と時間の問題。定量調査の主体はインターネット調査になり、郵送調査や会場調査は行っても、訪問調査はめったにやらなくなってきた。
1万人の全国調査を訪問調査でやったら、数千万円、3ヶ月くらいはかかるだろう。それがインターネット調査であれば十分の一の費用、数日で可能だ。
実態との差ばかり気にすると、インターネット調査のマイナス面が目立ってしまうが、調査内の数字、「A商品とB商品の認知度の差」など絶対数字でなく相対数字なら、十分に有効だ。だから、さまざまな角度で分析し、何らかの意志決定を行う市場調査の場合、それほど問題なく活用できる。
そもそもアンケート調査は所有率にしても、実地検証ではなく、調査対象者の記憶に頼っている。「家のなかのドアの数はいくつありますか?」と聞かれて、一扉、二扉と実際にドアまで行って確認はしてくれる人はそういない。
市場調査も統計調査の枠組みにあるが、得た数字を絶対数字として施策と結びつける、つまり数字が意志決定と直結するケースは向かない。例えば「病気罹患率で薬の生産量を決める」などだ。
そのような場合にインターネット調査を活用するには、前回の同様の調査結果から推測する、これもいわば「調査内の数字比較」によって「前年比10%生産増」いうように傾向を測る方法がある。