2010年10月1日金曜日

インターネット調査は信頼できない?(2)実態との誤差

おそらく2000年に入って数年だったと思うが、その頃はたまにインターネット調査を試しては、まだ難しいなと思いながら、どういうものなら使えそうか見計らっていた。試していたのは調査の内容ではなく、この対象者(の偏りに)対しても大丈夫そうな調査は何だろうということだった。
当時はまだ他の調査手段もあったのでその差を比較できた。例えば、化粧品の所有銘柄などは実態とは±30%はあった。

2005年以降くらいになると、だんだん実態に近づいてきた。それはパソコン、インターネットの普及とインターネット調査会社のモニター数拡大によって対象者の幅が広がったからだ。
最近のパソコン普及は9割を超えている。
それでも、実態との差は最大で±20%くらいは覚悟しておこうという感覚だ。
対象者が契約したモニター、その調査に応募した人であることが、大きな理由だと思う。

その差がどれくらいで収まっているかは、その時その時の調査結果、回答の様子や標本数誤差から何となく判断をしている。「だいたい±5%くらいかなあ」という曖昧なレベルで、明示できるようなものではない。
2つのインターネット調査会社で同時に同じ調査を行った企業もあるくらい、その誤差を測りかねているのが現状だ。
うまくいった調査の場合は、ざっとインターネット普及率0.9で割ると実態1.0に近いと思われる数字が出る。

そんな誤差の可能性を含みながらも、インターネット調査を行っているのは、主に費用と時間の問題。定量調査の主体はインターネット調査になり、郵送調査や会場調査は行っても、訪問調査はめったにやらなくなってきた。
1万人の全国調査を訪問調査でやったら、数千万円、3ヶ月くらいはかかるだろう。それがインターネット調査であれば十分の一の費用、数日で可能だ。

実態との差ばかり気にすると、インターネット調査のマイナス面が目立ってしまうが、調査内の数字、「A商品とB商品の認知度の差」など絶対数字でなく相対数字なら、十分に有効だ。だから、さまざまな角度で分析し、何らかの意志決定を行う市場調査の場合、それほど問題なく活用できる。
そもそもアンケート調査は所有率にしても、実地検証ではなく、調査対象者の記憶に頼っている。「家のなかのドアの数はいくつありますか?」と聞かれて、一扉、二扉と実際にドアまで行って確認はしてくれる人はそういない。

市場調査も統計調査の枠組みにあるが、得た数字を絶対数字として施策と結びつける、つまり数字が意志決定と直結するケースは向かない。例えば「病気罹患率で薬の生産量を決める」などだ。
そのような場合にインターネット調査を活用するには、前回の同様の調査結果から推測する、これもいわば「調査内の数字比較」によって「前年比10%生産増」いうように傾向を測る方法がある。

2010年9月29日水曜日

インターネット調査は信頼できない?(1)統計調査との違い

「インターネット調査はあてにならない」という声がある。特に、マスコミの世論調査の場合に言われることが多い。本当は統計調査の専門家に解説して欲しいが、「ツイッターについての1万人市場調査」を行ったので、インターネット調査を実務で活用する方の人間として少し経験的なことも含めて触れてみたい。

 統計調査で最も信頼できるのは「全数調査」で、今実施されている「国勢調査」がそれにあたる。要するに全員に調べるわけだから「4人に調査をして、一人がワニを飼っていたら25%の人がワニを飼っていることになる」というような笑い話はなくなる。

 ただ全数調査でも「誤記入」や「勘違い」の可能性はある。国勢調査はこれまで、記入漏れなどのチェックをしていたが、今回(2010年)から、個人情報保護の観点から調査票に封をして回収されるようになった。
 調査における誤記の確率についての研究は目にしたことがない。学校の一クラスに、アンケートを配ったら、一人か二人くらい「そんな質問だったの?」「記憶違いだった」という人が出るかも、という心の準備はしている。

 全数調査ではない「サンプル調査」の場合はワニの例のように、何人に聞いたか?ということがまず最初の問題で、テレビ視聴率の600サンプルの場合、
視聴率20%というのは、16.7%〜23.3%の間のどこかに、95%の確率で収まる、ということになる。ここまでズレが大きければ、「数字」というより「目安」という方が正しいかも知れないが、調査の数字というのはそんなものと最初から思ってみた方がストレスは少ない。

 新聞社が行う政党支持などの世論調査は、電話調査の場合が多い。電話番号を徹底的にランダム・サンプリングすれば対象者の偏りは少ないという考え方から来ている。インターネット調査を選択しないのは、「パソコンを持っていて、どこかのネットリサーチ会社のモニター契約をしている」という偏りを気にしているからだと思う。そこからもインターネット調査はあてにならない、というイメージは来ているのではないだろうか。
 その偏りは本当で、電話調査は確かに精度では勝る。だた電話調査は、質問数が限られる、耳で聞ける長さの質問文と選択肢というマイナス点がある。だから、マーケティング調査のように「結果の数字そのものよりも分析重視」の場合逆に、電話調査を使うことはほとんどない。

2010年7月5日月曜日

ブランド浸透分析から見えてくること

ブランド浸透度が描ければ、他ブランドと比較してどの部分が強い、弱いかが見えてくるし、自社ブランドの課題のありかも浮かび上がってくる。

ブランド浸透度は「ブランドが知られている」「買われている」「買いたいと思う」(それぞれ、持っている、持ちたいと思うでも可)の大きく3つの視点でとらえている。
ひとりの消費者を思い浮かべれば「過去にどこかで知って、今買っており、今後また買いたいと思う」ということで、『ブランドの過去(蓄積)』『ブランドの現在』『ブランドの未来』と見なすこともできる。

特に「ブランドが知られている」については、純粋想起を加えて「ブランドの強さ」を示しているが、これは第一想起率(最初に思い浮かんだブランド)に替えてもかまわないし、もちろん再認知名率だけでもかまわない。

このグラフではブランドAは、ブランドBに対して優位だけれど将来においては接近もしくは逆転されるおそれがあり、商品満足度や商品の評判について再考しなければならない。

ブランドBはブランドの『過去』と『今』に問題があるが、過去を修正せずに今だけを上げることはできない。
特に『過去』の「ブランドの強さ」が大きく落ち込んででいるのは、消費者の「言われたら知っているが、積極的には思い浮かばない」状況をあらわしていて「顔となる商品があるか」「商品名に問題はないか」「話題性を提供しているか」などの課題があげられる。

今、自分をマーケティングするとかブランド化するという話も聞きますが、すごいなと感心する反面、生きていくだけでも大変なのにこんなにややこしいこと自分に課さなくてもとも思います。

2010年7月2日金曜日

ブランド浸透分析

ブランド力評価は主に企業と商品の2つある。企業ブランドは無形資産として勘定される動きがあって、その企業の知名度はもとより成長力や国際性、売上げと利益などさまざまな評価軸が模索されている。

商品のブランド力のほうは消費者にそのブランドが支持されている度合いによって決まる。突きつめれば「同じ所に並んでいる同じ特長(スペック)の商品ならば、いくらまで高くてもBブランドでなくAブランドを買うか」ということになる。その価格差がブランド力そのものを表している。

しかし現実には同じ商品ということはなかなかないし、ブランドによる価格差は分かったけれど、どうすればいいのかというヒントにはならない。それで「ブランド浸透」という考え方から4つの基本指標を設定した。

1.ブランドが幅広く知られている =助成想起率(○○というブランドを知っているか)
2.代表的なブランドである =純粋想起率(△△のジャンルで思い浮かぶブランド)
3.ブランドに接している=購入率、所有率
4.ブランド・ロイヤルティ=購入意向率、所有意向率
それを表したのが「ブランド浸透グラフ」で以下の見え方になる。




このブランド4指標の設定、浸透グラフの作成については元()東急総合研究所の光岡健二郎氏と元(株)東急エージェンシー、現:東京急行電鉄()の大野晃弘氏のご教示をいただいた。また指標こそ違うものの「浸透」という考え方は、企業ブランド分析で既に見られていた。

20年くらい前のことだしさまざまな仕事で応用しましたので、今では全く関係のない調査会社や広告代理店の案内書、報告書で同様の分析をみかけることがあります。おそらく通用力がある分析なのだろうと思っています。


2010年7月1日木曜日

ツイッター登録者、主婦が学生を上回る(6月予備調査時点)

今年に入って急増を続けているツイッター登録者を職業別に見てみた。
伸長度が目立っているのは専業主婦、無職、会社・団体の役員、自由業、公務員など。
学生よりも専業主婦の構成比率が高くなっており、ツイッター登録者も、1.会社員 2.専業主婦 3.学生の順となった。
急増度では会社経営者・役員、公務員が高い。
(前述のとおり、2010年以降の棒グラフは実数ベースで2.3倍の長さ。いずれも伸長したことが前提。)


2010年6月30日水曜日

2010年前半のツイッター登録者、6.5割が40代以上(6月予備調査時点)

ツイッター登録者の年代別構成比を2009年以前と2010年以降で比べてみた。


2009年以前のツイッター登録者数の実に2.3倍の人が2010年になって登録している(下図グラフのn数 209→478)。帽子1個の上に2個の帽子が重なった感じ。

実数ベースで言えば下段の2010年グラフの長さは、上段の2009年以前グラフの2.3倍なので、学生や20代、30代が減っているわけではない。
(いずれの世代も2009年までの登録者に対して1.5倍以上の人が今年に登録。)

だから年代構成は変化しているものの構成比減少の方にはあまり意味はなく、今年になって登録した人の6割強(64.4%)が40代以上ということに注目しておきたい。増加度だけで言えば、60代が最も大きい。



ちなみに男性55%女性45%と、男女比率には大きな変化がない。
これだけの登録者急増が男女差に影響を与えなかったことから、ある程度安定性を持った比率と見ることができる。(もしもこの男女差に変化がある時には、ツイッターそのものに大きな質的変化が起こる時かも知れない。)

2010年6月29日火曜日

ツイッターユーザーの7割が今年になって始めた人(2010年6月時点)



現在ツイッターを登録している人の7割が今年になってツイッターを始めたという結果については、予備的な調査なのであくまでも参考値とみなしていた。(実施6月18日〜20日)

私たちの調査は、高校生から60歳以上の男女3477サンプル、ランダムにアンケートに応じた人たちで結果としてやや50代以上の割合が高くなっている。(そのうちツイッター登録者が687人)


そして、同時期(6月4日〜7日)に行われた、IMJモバイルの「ユーザー利用動向調査」でも7割の人が今年になってツイッターを始めたという結果が発表された。
IMJモバイルの調査対象者は15歳から49歳の3G端末を保有していて週1回以上Twitterを閲覧している人520サンプルで、男性および20代、30代の割合がやや高い。(P9参照)

2つの違う調査結果が同じ「ツイッターユーザーは今年になって登録した人が7割」になった。ランダムに抽出された対象者からの、登録者の内訳だということを併せほぼ正しい数字ととらえてよいだろう。

2010年6月25日金曜日

ツイッター参加者の急増続く(?)〜調査数字の読み方



この4月初めの既存調査では、昨年後半にツイッターを始めたひともかなりいて、今年始めた人の割合は約4割。(株式会社ネットマイル調べ 2010.4.2〜5)
6月に実施した私たちの予備調査では、が今年になって始めた人が7割近く占めている。正確には、登録時期が2010年1月から6月の人の割合、69.6%。(株式会社マーシュ調べ 2010.6.18〜20)
両者の割合を比較すると4月と6月の間に相当数の人がツイッターを始めたことになる。

4月までのリーチ(ネットユーザー全体における利用者率)もたしかに急増状態でだいたい直近3ヶ月間で倍増のペースだ。おそらくこのペースが落ちずに続いているのだろう。

ネットレイティングス株式会社提供:ニールセン・オンライン(Nielsen Online) インターネット利用動向調査「NetView2010 3 月データ

【インターネット調査の数字を読むときの注意】
一定のモニター・サンプリングを経て行われる消費者調査、そこにインターネット利用者という条件が加わる調査ではスコアが高く出る傾向。わたしたちはそれを先行指標的な数字と読むことが多い。
(経験的目安ではインターネット調査の数字は実情±10〜20%くらい)

様相を冷静に見るためにランダムサンプリングでなく、日本の性・年代区分人口比に応じた割り付けサンプリング(調査対象者数の配分)をすることは必要だろう。さらに統計的に見ようとすれば地域別人口割り付けをすることもある。

今後のツイッターのあり方に、長くやっている人と最近始めた人の違いが影響するならば、前者に対して有効に分析するためのサンプル数を確保しなければならないかも知れない

2010年6月24日木曜日

マーケティング裏話〜ホンダ青山マンション?

このブログはツイッターの補足ではじめたのだが、今思うことを語るツイッターに対して補足となると多少整理をしたくなってくる。書く作業もちょっと重いかな?そんなことを考えてたら、一度読んでくれた人がブログではもっと軽いマーケティングの裏話みたいなもの、自分自身の話とかそんなものを知りたいという感想をくれた。

ツイッターの補足ストックでじゃなく長い版ツイッターになりますね、と素直に試してみることにして第1回。第1回ならば古い話ながらやっぱりこれにしたい、私の思うマーケティング、仕事のしかたの出発点かも知れないから。

私が駆け出しの頃ホンダの本社は原宿から渋谷方向、明治通り沿いの賃貸ビルにあって、おしゃれな色のジャケットを着た本田宗一郎さんの姿も時折見かけた。1980年代初めだったから、もちろんその時には世界にホンダの名は知られていた。

「金さん、今度自社ビル建てるんですよ。」当時の主査(課長)がにこやかに言った。
「自社ビルですか。すごいですね。」
「会社が危なくなったらマンションにして売ろうと思ってるらしく、各階にはベランダがついてて、仕切りをつければすぐ2LDKの部屋がたくさんできるようにしてあるんです。」

公式発表には大地震のときに割れた窓ガラスが歩行者に落ちないよう各階にバルコニーを設置したとあった。いまだに冗談だったのか本当だったのか分からない。
当時のホンダは新商品1車種失敗すると会社が傾く、せめて1.5車種、できたら2車種の失敗でもなんとか持ちこたえられるメーカーにならなければという緊張感のなかにあったので、真に受けて聞いていた。

その新本社ビルは今も青山1丁目の角に、洗濯物も干されずに建っている。

2010年6月15日火曜日

ツイッターユーザーと企業


アメリカでの企業との関係の質問例。
結果が何を示しているかもう一つ分かりにくい。やはり一般生活者との比較がないと読みにくい。

ツイッターと企業の関係(米調査)

企業や製品に対する推奨をする(したことがある)
企業や製品について話す(したことがある)
ブランド/企業の製品を購入する(したことがある)
企業や製品の広告にリンクする(したことがある)
企業のプロモーションやイベントに参加する(したことがある)

2010年6月14日月曜日

TwitterについてのSWOTアンケート

ツイッターユーザーに対してSWOT質問を投げかけるとすれば、質問はどうなるか?

ツイッターSWOTアンケート質問例
S  Strength 強み):
1. ツイッターのいいなと思うところ、好きなところは何でしょうか?




 Weakness 弱み):
Q2. ツイッターがつまらないな、嫌だと思うところは何でしょうか?




 Opportunity 機会):
Q3. 今後ツイッターの利用が増えるとすれば、それはどのような理由から?特にツイッター以外の理由、背景について教えてください。




T  Threats 脅威):
Q4. 逆にツイッターの利用が減るとすればどんな理由が考えられますが?特にツイッター以外の理由、背景について教えてください。




結論:
Q5. ツイッターが社会でもっと盛んになるにはどうなればよいでしょうか?ツイッターそのものについても、それ以外の変化でもかまいません。




→参照:「マーケティング分析法」 SWOT3.0〜生活者SWOTアンケー

クラウド時代のSWOT3.0〜生活者へのSWOTアンケート

調査では、回答を寄せる調査対象者のことを「被験者」と呼ぶのが正式で、これは統計調査からきた言葉だろう。消費者実態を調べる目的ならば調べられる人=被験者で良い。でもマーケティング調査ではこの商品をどうしたらいいのか、市場構造についてこう考えるけれど生活者の実感はどうだろう、など被験者を調べるというより調査対象者の考えを教えてもらいたい、仮説を彼らに評価してもらいたいというのが現場感覚だ。

だから「被験者」というよりプランニング・プロセスにおける「協力者」、できたら知恵を借りたい「頭脳提供者」とみる思いが強い。(こちらは困っているから)

SWOTを一般社員に対して行えたように、生活者にSWOTをやってもらうことができる。
その場合社員のように問題認識をもっているわけではない方もいるし、比較的プランニングの初期段階の情報探索の位置づけのことが多いのでTOWS(問題認識から)ではなく、SWOT的に。ユーザーであれば支持理由(S 強み)に相当する質問から入ることが多い。

商品の場合のSWOTアンケート質問例
S  Strength 強み):
1. この商品の好きなところは何でしょうか?




 Weakness 弱み):
Q2. この商品の気になるところは何でしょうか?




 Opportunity 機会):
Q3. あなたがもっとこの商品を買うことがあるとすれば、それはどのような理由から?




T  Threats 脅威):
Q4. 逆にこの商品を買わない、止める場合はどのようなケースが考えられますが?




結論:
Q5. この商品の改良点があれば教えてください。


このような「被験者」発想でない調査は統計調査的な視点からは生まれ難い。
社員と同様、ここでも生活者の「頭脳」を一つのテーマについて借りたわけだ。

「社員SWOT調査」「生活者・消費者SWOT調査」ともに部分的には、同様の質問が投げかけられることもあると思う。しかしSWOTの流れに乗って結論に至るまで考えを聞くという発想はこれまでなかったのではなかろうか? 
SWOT=マネジメントクラスの道具であるアメリカでは生まれにくいし日本でも寡聞にして他社の事例を知らないので、一応世界初ということにしている。
もちろんクラウドから生まれたのではなく、はるか以前からSWOT質問として調査に取り込んでいる。

クラウド時代のSWOT3.0〜社員SWOTアンケート

クラウド・コンピューティングは頭脳がクラウド(雲)のなかにあって、こちらはそれを拝借し楽しむ、ネットワーク・コンピューティングはそれぞれの頭脳が相互に働き合うととらえていいのだろうか。「世界にコンピュータは、5台あれば事足りる」らしいからクラウド・コンピューティングはもっと壮大な世界なのだろうが、取りあえず「頭脳を借りること」と解釈してみよう。

SWOTは厳密にやろうとすればそれほどやさしい分析法でなく、どちらかというと熟達者のものだということは既に触れた。それは、SWOTの枠外の知識や経験から来る見識がからむことと、特に結論(ソリューション)には飛躍的な発想が求められるからだ。

ある企業の事業方向性検討のプロジェクトがあって、SWOTがふさわしいのではということになった。厳密なSWOT分析の難しさに加えて、幹部各者の見解をいれながらとなると難易度はさらに高まる。合宿で行う企業もあるようだ。

そこで自分たちでSWOTをやるのではなく、社員にSWOTアンケートをしてみたらどうか、と提案した。
SWOTMBAの基本ツールの一つでもあるので、ヒエラルキーの強い米企業では一般社員に事業方向性を聞くということは考えられない。SWOTはマネジメントクラスのするもの。
カイゼンが全社運動となったように日本企業の特質かも知れない、実際に店頭に立っている社員がSWOTなどできるわけがないといった懸念も出たが、やってみたところ十分手応えのある回答が返ってきた。

社員アンケート質問は、素直にTOWSで行われた。
T  Threats 脅威):
Q1. 会社のこれから、最も脅威となる時代変化や環境変化は何だと思いますか?


 Opportunity 機会):
Q2. 逆に、会社にとってチャンスと思う時代変化や環境変化は何だと思いますか?


 Weakness 弱み):
Q3. そうしたときの現在の会社の弱みや問題点は何でしょうか?



S  Strength 強み):
Q4. 会社が発揮できる強み、特長は何でしょうか?


結論:
Q5.では会社はどのような方向を目指すべきでしょうか?具体的なアイデアも含めて教えて下さい。


SWOTは一般的に直観に頼ってはならず、あくまでも情報を集めさまざまな角度から分析し、論理的組立てをすべきとされる。だが人間の頭脳というのはあなどれない。おそらく単純な質問に悩みながらも直観で回答していくのだろうが、そのなかに分析、推論、飛躍という本来のSWOTが求めるものは十分に織り込まれている。

プロジェクトは集まったアンケート回答を整理し、再分析する。もちろん集めて結果こうでしたではない。情報を眺めながら再SWOTを行い、社員が気がつかなかった結論(ソリューション)を出す。これが本来のマネジメントの仕事だと思う。

つまり「社員の頭脳」を一つのテーマについて借りたわけで、それをもってクラウド時代のSWOTは言い過ぎだろうが、これからのSWOTのやり方の一つではないかと思っている。
モチベーションを高めることにも役立つし、1,2年に1回こういうアンケートを実施して全社の知恵を借り、企業の方向性見直しをしてみてはどうだろうか。